ガトーナンテ

今日はガトーナンテ
(Gâteau nantais)を
ご存知ですか?

「ナントのお菓子」
を意味する名前の通り、
ペイ・ド・ラ・ロワール地方の中心都市、
ナントの銘菓です。
ナントはロワールの地域圏に属しながら、
ブルターニュ公国城のお膝元。
ロワール河口から50キロほど
内陸に入りますが、
浅瀬なので船の出入りが可能で、
かつては造船場も多く存在した
港町としての色彩も残す
魅力的な街です。

このガトーナンテ、
バニラ風味のアーモンドプードルの生地に、
アプリコットジャムを塗り、
生地にもグラサージュにも
たっぷりとラム酒を効かせた
大人のお味ですが、
18世紀の三角貿易により、
アンティル諸島のサトウキビやラム酒、
ブルボンバニラなどが輸入された
港湾都市ナントならではの
お菓子と言えます。
.
上の写真はナントの市場で売られていた
オリジナルレシピによるガトーナンテ。
こちらは現地のパティシエールの
デモを見学した際のもの。

このガトーナンテですが、
保存性が高く、
船乗りたちの食料として
重宝されていたとも聞きます。
オリジナルは油脂分ゼロだったそうで、
数ヶ月の船旅にも十分耐えるものでした。

1820年の文献によると、
ナント在住のフワス職人
Rouleau氏が、
これとよく似たお菓子を
作ったとの記述があり、
当時はサロンの茶菓子として
提供されていたようです。

しかしその後次第に
その存在が薄れ、
人々の記憶から消えつつあった時に、
あの有名なビスキュイトリの
LU社が1910年に復活させ、
工場生産に踏み切りました。
(1972年まで作られていたようです)
その後、
ナントのパティシエたちが
それぞれに工夫を重ね作り続け、
今に伝わるとされています。

ところでこのガトーナンテ、
元々保存食だったと
前述しましたが、
1890年刊の
ピエール=ラカン
「製菓覚え書」にも
記述があります↓↓↓
これを再現すると
今のスタイルとは
全く異なる
ビスキュイスタイルとなり、
保存食時代の面影を
感じることができます。
これはラカンのルセットに基づき、
焼かれたガトーナンテ。
堅めのビスケットで、
右のものはほんのりラム酒風味です。
さしづめ日本の乾パン?

どのような経緯で
今のような
ケーキスタイルになったかを
裏付ける資料が
見つかりませんが、
手持ちのLU社の資料を見ると、
ガトーナンテの箱の形から
ケーキ様が想像できます。
…ということは、
1900年前後に
ちょっとした変革が
あったのかもしれません。

最近では日本のパン屋さんや
焼き菓子屋さんでも
時折見かけます。
もし出会ったら、
是非お試しを❤️

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